中国では、長期間にわたってお金を騙し取る手法を「殺豚版(豚を太らせてから食べる)」詐欺という。結婚詐欺もその一つで、近年は独身の高齢者もターゲットにされている。北京市西城区(シーチェン)の裁判所は最近、国家公務員を装った男が高齢女性から約29万元(約580万円)をだまし取った「熟年恋愛詐欺」事件を明らかにした。
西城区に住む張さんは、娘が結婚して以来、一人暮らしをしている女性で、北京の「長年の独身官僚」を名乗る王容疑者とSNSで連絡を取った。張さんは王容疑者の「条件がいい」と思い、コミュニケーションアプリでやりとりを続け、一度も会うことなく結婚の話をするようになった。
王容疑者は張さんに対し、「官僚の結婚には政治的な審査が必要」などと説明した。彼は張さんに、「結婚後、張さんの娘の役所での仕事の面倒を見ることができるが、まず金が必要だ。私の給料を一時的に引き下げることができないので、その費用を一部負担してほしい」と言った。
張さんは一瞬ためらったが、王さんは「結婚したら100万元(約199万円)の共有財産ができる」と言い、数十万元を彼女の銀行口座などに振り込んだので、だまされることになった。その後、「秘書」を名乗る男から「(容疑者が)急に病気で入院し、治療費が必要になった」と連絡があり、さらに10万元(約199万円)を送金した。しかし、王さんに面会を求めたところ、「秘書」はさまざまな理由をつけて断り続けたため、疑問に思った張さんは警察に相談した。
捜査の結果、警察は王容疑者を特定し、摘発した。実は、彼は官僚ではなく、江蘇省(Jiangsu)に住む無職の男だったのだ。西城裁判所は、詐欺罪で懲役6年6カ月、罰金7000元(約14万円)、賠償金約29万元を命じた。
西城法院の王斉副院長は、高齢者の年金を狙った「投資・財務管理」「不動産購入」「保険代理」「骨董品収集」「熟年恋愛」などの詐欺が横行していると説明した。中でも熟年恋愛詐欺は、独身高齢者の孤独につけ込み、身元確認もせずに相手を信用しないよう促す。